東洋文庫の蔵書は、漢籍を含むアジア諸地域歴史文献（チベット語、タイ語、アラビア語、ペルシア語、トルコ語など諸言語文献）と欧文資料および和書とに三大別されます。
現在の所蔵総数は約95万冊。広くアジア全域を網羅するこれ程まとまった収集は世界的にもあまり例がなく、多くの貴重資料、貴重コレクションが含まれています。
この中には、国宝5点（毛詩、春秋経伝集解、史記、文選集注、古文尚書の各書写）と重要文化財7点（礼記正義、論語集解、古文尚書等の書写、ドチリーナ・キリシタン天草本、ジョン・セーリスの航海日誌など）が含まれます。
貴重資料としては、甲骨文字片635件、中国地方志3,000部、中国族譜860部、チベット・蒙古大蔵経13,000点、14世紀後半書写のコーランなど多岐にわたります。また、世界各地に所蔵されている敦煌文書（大英図書館所蔵のスタイン将来文書、パリ国立図書館所蔵のペリオ将来文書、中国北京図書館所蔵写経、ロシア科学アカデミー東洋学研究所サンクト・ペテルブルグ支所所蔵文書等）のマイクロ・フィルムが収集されており、グローバル・コレクションとして特筆されます。
なお、特色ある貴重コレクションとしては、モリソン文庫、岩崎文庫を中心として、以下多数の受贈コレクションがあります。
*　モリソン文庫： G. E. モリソン氏が北京駐在中およそ20年間に腐心収集したもの。中国を中心としてパンフレット類約7,200種を含む欧文図書24,000冊、地図版画約1,000点、定期刊行物120種余り。特に重要なものとして、マルコ・ポーロ「東方見聞録」の各種刊本54種、中国地方語辞書500冊、日露戦争資料約300冊、各国の中央アジア探検隊の調査報告等が含まれています。
*　モリソン二世文庫：G. E. モリソン氏次男夫妻収集による東南アジア関係書。
*　岩崎文庫：岩崎久彌氏旧蔵和漢書37,833冊。漢籍のほか、日本書紀以来の日本史、日本文学研究の貴重資料が多く含まれています。なお、古鈔本、五山版、古刊本のほか、新井白石、小野蘭山、木村正辞等諸家の旧蔵あるいは手鈔本など書誌学上の重要文献も多く、江戸時代の文学、演劇、美術、地理等に関する資料を含む貴重多彩なコレクションです。
*　前間恭作氏旧蔵朝鮮古籍。
*　藤田文庫：藤田豊八博士旧蔵和漢書。
*　永田安吉氏旧蔵ベトナム古籍。
*　ラフカディオ・ハーン、チェンバレン往復書簡類。
*　シーボルト関係文書ロートグラフ類。
*　井上準之助氏旧蔵和漢洋書。
*　小田切文庫：小田切萬壽之助氏旧蔵和漢書。
*　幣原坦氏旧蔵朝鮮古籍。
*　河口慧海氏旧蔵のチベット経典、文献。
*　藤井尚久氏旧蔵近世日本医学史書籍。
*　梅原コレクション：梅原末治氏旧蔵日本アジア考古学資料、和漢洋書。
*　松田嘉久氏旧蔵タイ語文献。
*　辻文庫：辻直四郎氏旧蔵インド語文献。
*　ベラルデ文庫：ベラルデ家旧蔵フィリピン文献。
*　岩見文庫：岩見隆氏旧蔵ペルシア語文献。
*　榎文庫：榎一雄氏旧蔵和漢洋書。
*　護雅夫氏旧蔵内陸アジア史料。
*　開国百年記念文化事業会収集近代日本関係文献。
*　近代中国研究委員会収集中国・和洋文献。
*　山本達郎氏旧蔵東南アジア和漢欧文書。
*　マイクロフィルム・コレクション：前掲の敦煌出土文献のグローバル・コレクションのほか、フランス国立極東学院所蔵のベトナム文献、ポルトガル・アジューダ王宮所蔵の「アジアにおけるイエズス会士の書簡集」などがあります。